キャリアコンサルタントとして駆け出しの頃、いちばん苦戦したのは「曖昧な言葉を受け入れる」ことでした。
この仕事の前は、国の防衛にも関わる領域で事業を展開するサイバーセキュリティ企業で、営業推進をしていました。技術や製品の特徴を、正確に、端的に、わかりやすく伝える。それが仕事でした。
その一方で、週末はキャリアコンサルタントの勉強をしていました。共感、自己一致、感情の反映。言葉としては理解していても、一人ひとりと深く話すようになると、思っていた以上に難しいものでした。
「結論を急ぐ」クセ
当時の私は、とにかく結論を急いでいました。せっかちな性格に加え、仕事では「結局どういうことか」を整理することが求められていたからです。
「つまり、こういうことですよね」
「だったら、こうしたほうがいいんじゃないですか?」
けれど、キャリアの話はすっきりとはまとまりません。
「なんとなく嫌なんです」
「このままでいいのかなって」
そんな曖昧な言葉の中に、本人もまだ気づいていないものがあります。だから、すぐに答えにしない。もう少し話してみる。「私はこう思っていたんだ」と本人が気づくところまで、一緒に見ていく。
今では、曖昧な言葉こそが、その人自身の答えへの入口だと感じています。
答えを渡す、その前に
これは営業の経験からもよくわかります。どれだけメリットを伝えても、相手が自分のこととして納得していなければ、行動にはつながりません。動いたとしても、自分なりの意味づけがなければ続きません。
もちろん、必要な情報を伝えたり、選択肢や具体的な提案をしたりすることもあります。ただ、その前に、まずその人自身がどう考えているのか、何を大切にしたいのか、何に迷っているのかを一緒に整理します。
「こうしたほうがいい」と言われたからではなく、「私はこうしたい」と思えること。そこが行動につながると考えています。
答えがすぐ手に入る時代に
今は、情報も答えもすぐに手に入ります。AIに「私は何を大切にしたいのでしょう?」と相談すれば、それらしい答えをいくつも出してくれます。私自身もAIを使いますし、助けられることも多くあります。
ただ、答えを知ることと、自分で気づいて納得することは、少し違います。「あなたはこれを大切にしています」と言われるのと、「私は、これを大切にしたいんだ」と気づくのとでは、同じ言葉にたどり着いても、そこまでの過程が違います。
だから、「なんとなく」をすぐ答えに変えなくてもいい。うまく言葉にできないことも含めて、まず話してみる。話しているうちに、自分でも気づいていなかったことが見えてくることがあります。
その人自身が気づき、納得して行動に移せるように。キャリアコンサルタントを続けて10年、今もそこを大切にしながら、一人ひとりの話を聴いています。
